「ううっ・・・兄様っ・・・」
雲は一人、涙を流しながら土の山を作っていた。
いや、正確には墓を作っていた。
土の山を作り、そこに墓石を立てておこうと考えたのだ。
自分が倒してしまった、最愛の兄。
彼は真紅のマントを残して目の前から姿を消した・・・。
あの時は、何かと忙しくて墓を作ってやれなかった。
だから今回こそ、墓を作ってやろうと考えたのだ。
そうして、ようやく山を作り終えて、
「魔道士・赤い霧ココに眠る」
と書かれた墓石を立てる。
予め用意しておいた花束や線香をきちんとならべ、雲はあのマントを取り出し
少し躊躇った。
「・・・いくら・・・いくら兄様の墓でも、
コレは置けません・・・。コレは、私が持っています!」
結局、雲はマントをしまった。
そしてチーンと鐘を鳴らして、手を合わせてお祈り。
「我が弟よ・・・嬉しい・・・嬉しいぞ、兄はっ!」
それを影から見ている、ぼろぼろの霧。
なんとか執念で(笑)身体を保っているようだ。
実は不意打ちなんぞかけようかと想っていたのだが、
まさか雲が自分の墓を作ってくれているとは思わず、感動してしまい、
そんな考えも吹っ飛び、
今はそんな健気な弟に対しての愛情でいっぱいである。
「・・・兄様っ・・・兄・・・様ぁ・・・」
雲はしばらく山を作っていたために止まっていた涙を、
再び流し始めてしまう。
それほど彼は兄の事を慕っていたのだろう・・・。
遂には、鼻水まで出そうになり、
咄嗟に雲は霧のマントを引っ張り出して鼻をかんだ。
「やめんかーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!!!!」
スッパァァァァァァンッ!!!!!
と、霧は突然飛び出してハリセンをかました。
先ほどまでの雰囲気は一体何処へ・・・。
「いつも言っているだろう!?鼻はきちんとティッシュでかめと!!!」
「兄・・・様・・・!?」
いつものしつけのクセで、ハリセン片手に飛び出してしまった霧。
はじめは痛みにうずくまっていた雲だったが、
霧の姿を見つけると、彼に飛びついた。
「兄様ぁぁぁぁぁっ!!!!」
「く・・・雲・・・?」
「よかった・・・よかった兄様っ・・・!まだ生きていらっしゃったのですね!?
ならば何故、直に出てきてくれなかったのですか!?」
「雲・・・すまなかった・・・」
雲は霧の胸の中で泣き始めた。
霧は、そんな愛しい弟の頭を優しく、優しく撫でる。
「・・・すまなかった・・・。しかし、こんなにボロボロの我の姿を見られるのが・・・
兄としては、恥かしかったのだ・・・」
「そんなっ!!兄様はどんな格好でも兄様です!
・・・あ、コレ。マント・・・」
ちょっとばかり鼻水で濡れているマントを雲は差し出した。
顔を少し歪ませたが、霧はきちんとマントを受け取る。
「愛しい愛しい我が弟よ・・・我は・・・もうお前の傍を離れん。
こんな墓などっ!」
霧は回し蹴りで墓をぶち壊すと、再び雲を抱きしめた。
「雲・・・」
「兄様・・・」
ぎゅっとお互いがお互いの背に手を回して抱きしめあう。
「・・・ん?」
「兄様?どうかしましたか?」
「・・・雲・・・お前、服は何で洗っている?」
「え?洗濯機で、ヘルバの植物性石鹸使って・・・」
「服は手洗いで丁寧に丹精こめて洗えと言っているだろうがぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
再びその場に、ハリセンのよい音が響いた。
「やはりお前には、我がついていなければならないようだな・・・」
「兄様・・・これからもご指導よろしくお願いします!」
END
この小説はsome dreams 〜別館 FFSIDE〜の風上トオル様から頂きました。
実は管理人こうゆうギャグが好きなんです。 風上様本当にありがとうございました!
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